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機械翻訳で良質の翻訳を確保できるか – OTIの試み
日本語は特異な言語であるからと言って、それを口実に機械翻訳の進歩に乗り遅れるわけには参りません。
私たちが実際に行っているような翻訳が機械翻訳を利用して得られるかどうかについて、社内翻訳者の協力のもと、実験をしてみました。以下、その実験から得られた見解を述べます。
機械翻訳利用の試み
最初に行ったことは、日本語の特殊性を踏まえたうえで、以下の5つの技術資料分野に分けたとき、それぞれ機械翻訳に適するかどうかを判断することでした。
A. 金融・経済・法務
B. 医学・薬学
C. 工業・化学技術
D. 特許・知財
E. その他
大まかではありますが、「この部門のこれには機械翻訳が使えそうだ」とか、「これには人による翻訳が適当である」といった違いが見て取れます。日本語から外国語、特に英語に機械翻訳する場合、日本語の文法や言い回しが正確で理解し易いものであれば、分かり易い英文が得られます。
そこで、これに該当するものから機械翻訳への試みを行いました。
試み-1 機械翻訳に取り掛かる前に
日本語原稿の内容と文章の質を見て、次の点を確認します。
(1) 口語体の書き言葉(分かり易い言葉)で書かれているか。
(2) 主語が省略されずに書かれており、文字や語法(言葉の使い方)に誤りがないか。
(3) 一義的な言葉(意味が1種類)で書かれているか。
(4) 修飾語と被修飾語の距離が離れて(位置が離れすぎて)書かれていないか。
日本語原稿に最小限求められるこれらの事項が満たされれば、機械翻訳による英文作成の第一歩が始まります。
試み-2 機械翻訳が適さないものの判断
日本語原稿の内容と文章の質を見て、機械翻訳が不適切であると思われるもの。
(1) 実際の発言のスクリプト(文字起こししたもの)、または話し言葉で書かれたもの。
(2) 書き言葉でありながら、安直な書き方、ひいては誤字、語法が使われているもの。
(3) 「誤り」ではなく駄洒落(ダブルミーニング)、強すぎる表現もしくは丁寧過ぎる表現、皮肉などが意図的に挿入されているもの。
(4) 「プレゼン(presentation)」のような短い項目が列挙された原稿で、機械翻訳した場合、英文プレゼンとしては不自然になるもの。
以上のような原稿は、大幅に書き換えない限り機械翻訳には使えません。
試み-3 機械翻訳の手順
1.日本語 → 英語訳 (例)
機械翻訳の利用を試みます。翻訳する機会の多い[日本語 → 英語訳]を取り上げてみます。
この場合、いきなり全文を機械翻訳にかけずに、日本語原稿の数箇所から、それぞれ2行~5行から成る文章を選んで機械翻訳にかけ、試験的に英訳します。得られた英訳文について、訳文の採用可否が判断できる者(社内翻訳者)に意見を求め、採用されたならば全文を機械翻訳にかけます。次いで、ポストエディター(事後編集者;機械翻訳した訳文を点検し、正しい訳文に修正する翻訳者)の校閲を受けて仕上げます。
試験的英訳の結果、機械翻訳の利用が不採用であれば、これまで通り当該分野の翻訳者が翻訳を担当します。
2.英語 → 日本語訳 (例)
次に外国語を日本語に翻訳する場合ですが、ここでも、扱う外国語として圧倒的に多
い[英語 → 日本語]を取り上げることにします。
英語原稿の数箇所から、それぞれ2行~5行から成る文章を選んで機械翻訳にかけ、試験的に日本語訳します。得られた訳文について、当該機械翻訳の採用可否が判断できる者(社内翻訳者)に意見を求め、採用されたならば全文を機械翻訳にかけます。次いで、ポストエディター(事後編集者;機械翻訳した訳文を点検し、正しい訳文に修正する翻訳者)の校閲を受けて仕上げます。
注意すべき点は、英語がすべて英語圏からのものとは限らないことです。フランス、ドイツを始めとする幾つかの国からも英語の文書が送られてくることがあります。これらを前項同様に機械翻訳にかけた場合、得られた日本語訳の採用可否を判断するのが困難な場合があります。機械翻訳を断念して人による翻訳に任せるか、全く別の視点から取り組む必要があそうです。
試験的日本語訳の結果、機械翻訳の利用が不採用であれば、これまで通り、当該分野の翻訳者が翻訳を担当し、必要があれば校閲を受けて仕上げます。
まとめ
上記で提唱する手順を予定通り実行すれば、充分に納得のいく訳文を機械翻訳から得ることができます。
その場合、機械翻訳からどの程度の訳文(たとえば、日本語→英語訳)が得られるかは、元原稿である日本語の内容と文章の質によって異なります。機械翻訳から正確な情報が得られれば、訳文も確かなものとなります。
現状で機械翻訳を使って日本語から翻訳できそうなのは、英語、韓国語など限られたものですが、機械翻訳は今後とも進化が見られるはずです。
国際経済社会の調和と発展への寄与が求められる日本にとって、翻訳品質の維持と改善は必須事項です。人による翻訳だけでは不十分であり、機械による翻訳原稿の量と質をより一層向上させる必要があります。
OTI Inc.はこの課題に果敢に取り組んで参ります。
(2021年11月15日現在)